大槻 勤・友子
大槻 勤・友子

山肌に沿って谷を下ってゆくと、ガサガサッと怪しい物音…。熊か!と身をこわばらせた次の瞬間、竹の棒を持った翁が現れた。よく見ると連れ合いらしき女性の姿も…。

二人の背後の木々には黄色い果実が鈴なりです。手にしたこの棒で枝を引っ掛け、勢いよく揺すると、熟した果実がばらばらと地上に降ってくる。それらをひとつひとつ拾い上げて籠に入れ、自宅に持ち帰り洗浄し、すぐに手搾り機で搾汁して一升瓶に詰めるのです。

ここは天橋立に抜ける山道を横にそれたところにある小さな集落、長尾(なごう)の里。長年にわたり柚子を植樹し特産品として栽培しておられます。この柚子は小ぶりでジューシー、まるで蜜柑のような多田錦という品種。酸味だけではなくほのかな甘みもあり、当蔵の純米酒とブレンドすると実にフレッシュで贅沢な味わいのリキュールになります。

大槻さんご夫妻は、現在この村の柚子生産組合の代表ですが、過疎化・獣害・栽培の難しさから、以前は多かった組合員も今では3軒になってしまいました。一升瓶一本分搾るのに10kgの実が必要な上、山の斜面での大変な重労働、お年寄りにはきつい仕事ですが、有機栽培の木々から実る柚子果汁の素晴らしさに惚れ込んでいる二人は、腰が曲がっても飄々と生産を続けておられます。

人懐っこいお爺さんと照れ性なお婆さんの名コンビ。いつまでも長生きして頑張ってほしいと願いながら、晩秋の山里をあとにしたのでした。

大槻 勤・友子

長尾柚子生産組合

生産している素材
柚子

この素材による製品
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